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ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか

ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか

ランドール・マンロー (著) / 吉田 三知世 (翻訳)
早川書房 (出版社)
2015年6月24日 (発売日)
Kindle版 (フォーマット)

著者はNASAでロボット工学者として働いた後、ウェブ漫画家になった人物だという。
「恋愛と皮肉、数学と言語のウェブコミック」というサイトを運営しているらしい。
本書は、そこから派生した投稿サイトに寄せられた、読者からの科学についての様々な質問に関する回答をまとめたものだ。
アメリカではベストセラーになったらしい。

質問. 光速の90パーセントの速さで投げられた野球のボールを打とうとしたら、どんなことが起こりますか?
――エレン・マクマニス
(「相対論的野球」、電子書籍のためページ数不明)

上のようなおかしな質問を、著者が科学を用いてユーモア感を持ちつつも、全力で回答してゆく。
1つ1つの回答はけっこうボリュームがあって、作者がよく調べたり考えたりしたなと思った。

僕が個人的に面白かったのは次のようなテーマだ。

  • 「相対論的野球」
  • 「使用済み核燃料プール」
  • 「レーザー・ポインター」
  • 「元素周期表を現物で作る」
  • 「最後の人工の光」
  • 「半分空のコップ」
  • 「惑星間セスナ」
  • 「ヨーダ」
  • 「軌道速度」
  • 「フェデックスのデータ伝送速度」
  • 「いちばん寂しい人」

たとえば、「フェデックスのデータ伝送速度」では、インターネットの伝送速度はフェデックスが配達するデータのスピードより遅いというようなことが書かれている。

「テープを山ほど積んで高速道路を猛スピードで走っていくステーション・ワゴンのデータ伝送速度を、ゆめゆめあなどってはならない」
――アンドリュー・タネンバウム
(「フェデックスのデータ伝送速度」、電子書籍のためページ数不明)

僕はインターネットが速いものだと思っていたので、これには目からうろこの気分だった。

また、「いちばん寂しい人」では、人類のなかで他の人から離れていちばん一人ぼっちだったのは誰かというようなことが書かれていた。
ここで登場した、アポロ11号のマイク・コリンズという宇宙飛行士の話にはしんみりさせられた。
彼は司令船操縦士として月周回軌道にひとりで残っていた人物で、自著の「火を運ぶ――ある宇宙飛行士の旅路」で次のように記しているという。

今私は一人だ、ほんとうに一人だ、そして、知られているあらゆる生き物から完全に隔てられている。私は他者と何の関係もない「それ」でしかない。人数を数えたなら、月の向こう側には30億プラス2人、こちら側には、一人のほかに誰が、あるいは何がいるかは神のみぞ知る、だ。
(「いちばん寂しい人」、電子書籍のためページ数不明)

宇宙空間に一人でいるなんて、僕は想像しただけで不安になってくる。

あと印象的だったのはオタクの話だ。
「惑星間セスナ」での、Xプレインというフライト・シミュレーターを作った人たちのことや、「ヨーダ」での、スター・ウォーズ・ファンがWookieepediaというサイトでスター・ウォーズに関する細かい情報を公開しているということなどを読んで思わず笑ってしまった。
世の中には何かの分野の熱狂的な愛好家というものがいるんだな。
それほど好きなものを見つけられるのはいいことだと思った。

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