死者の奢り・飼育
6短編が収められた作品集。
著者は日本人で2人目のノーベル文学賞受賞者なのだな。
江藤淳氏の巻末の解説によると、「死者の奢り」は著者の文壇的最初の作品で、「飼育」では芥川賞を受賞したらしい。
これらの作品を通じての一貫した主題は、”監禁されている状態、閉ざされた壁のなかに生きる状態を考えること”であったという。
本書に登場する死体処理室、療養所、外国兵という要素はそのような状態を表していたのだろうか。
死者の奢りは、死体洗いのアルバイトという噂のもとになったという話をどこかで見たことがある。
実際のところ、この仕事は存在しないんだっけか。
ということは、著者は自らの想像力でリアリティがある作品を構築したわけで。
作者の想像力の豊かさを僕は本書から感じたな。
この前読んだ本によると、筆者は寓意や象徴性を織り込んだ幻想的なイメージをリアルな描写の中に挿入するという独特な手法を持っているみたい。
また解説には、大江氏の文体が論理的な骨格と動的なうねりをもつ新しいものだとも書かれていた。
そう言われればたしかにそういうものかという気がする。
論理的でないと作品がリアルっぽくないだろうし。
波のようなうねりも文章から感じるような~