素直な戦士たち
息子を東大文一へ合格させるという計画遂行のため、全てを捧げる妻の千枝。
そしてそれに付き合わされる夫。
教育ママもここまで徹底的だとすごい。
本書はフィクションなので過剰に描かれているが、こういう母親は実際にいそうだから困る。
この本は1978年初版発行で、当時の過熱する受験競争、学歴社会を描いた小説だという。
よくできた物語だと僕は思った。
子供時代の兄の英一郎と弟の健次の兄弟はかわいい。
だが千枝のせいでかわいそうだな。
夫の秋雄も妻の言いなりだし。
話の途中で登場する係長の尾石や小学校受験の面接官の考えのほうが僕にはしっくりきた。
学力だけを重視するのでなく、いろいろな経験をさせて情操豊かで魅力的な人間を育てるのが良いということを作者は知っていたのだろう。
あとは親子が相互依存せず、自立して生きるのが良いのだな。
本書では、学歴は遺伝しないという話があったが、そういうものかもしれない。
勉強しかしたことのない英一郎は成長するにつれてどんどん病んでいき、放任主義で育った健次と衝突、恨むようになる。
そして事件が起きるのだった。
悲しいなぁ…