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日常の色々

春を恨んだりはしない

池澤夏樹
中央公論新社 / 中公文庫
2016年1月 (発売日)
文庫 (発行形態)

僕は1度も被災地を訪れたことがない。
今後足を運びたい。
本書は東日本大震災に熟考した筆者の持てる力の全てを注ぎ込み、震災の現実を多面的にとらえる一冊である。
パラパラ読めてわかりやすい。
おすすめの本だ。
作者の静かな怒りを感じる。
一億総懺悔という事だったのか。

7章表題
昔、原発というものがあった
(p.78)

言わずもがなだ。
被爆国が再び被爆したのではなかろうか。
放射脳というデマゴーグがネットを徘徊した。
お母さんたちがガイガーカウンターを購入したのだ。
子供たちの健康被害は大丈夫か。
三陸産の寿司が食べたい。

宮城県大川小学校の悲劇と言うものがある。
昔読んだ本に詳しかった。
津波が来て避難しようとして校庭に集まっていたがそこで時間がかかり襲われたということらしい。
僕は小学校時代の全校集会を想起した。
体育館に集められると教師たちは生徒を教育しようとする。
子供たちは非日常の空間に来たことから喜んで歓談する。
ところが子供たちは気づく。
教師たちの目だ。
教師たちは黙って生徒をじっと見ている。
児童は黙る。
教師たちはマイクを手に取り喋り始める。
あなたたちは静かになるまでに14分かかりました。
何のための全校集会か考えてください。
こんなに時間がかかってはいけませんと言う具合に。
大川小学校の事件はどうだっただろうか。
大変痛ましい事件であると僕は思っている。
悲しみについては言葉もない。
先生たちは教育的目的で大震災を軽んじたのではないだろうか。
いつも通り生徒を教育しよう学ばせようという風に。
早く避難していればよかった。
教師たちは決断するまで1時間もかかりました。
何のための避難か考えてください。
時間がかかってはいけません。

東北大震災では石碑の存在も大きく捉えられた。
貞観地震のそこより下は危険とされた教訓の石碑なのだ。
しかし現代人たちはそのことに気づかなかった。
どこまで逃げればいいのか。
どの高さまで行けば安全なのか。
石碑はそのことをしっかりと教えてくれていたのだ。
庚申塚と言う石碑がある。
神様に三尸の虫が悪事を報告するという伝承で、それを妨げるために深夜まで起きているという習わしに由来する。
それが農作物の害虫滅法と結びついてお祓いの形式となったと推測する。
石碑を見てそのことを想像する人がどれだけいるだろうか。
道祖神と言う石碑もある。
町に配置して悪神の侵入を防ぐ意味合いがある。
21世紀に生きる我々は充分気づいてないのではなかろうか。
今回の大震災を契機に新たな津波の石碑が立てられた。
東北人のヒエログリフだ。

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