一条の光・天井から降る哀しい音
所謂、命終3部作が収録された短編集だという。
著者は千家元麿さんという詩人に師事していたそうで、千家さんの作品と思い出から師について読み解く作品が2作、あと著者の私小説が4作載っていた。
淡々とした中に作者の人生の喜びと悲しみが感じられる静かな作品という印象だったな。
表題作は、ある日著者の生涯を貫いた「一条の光」についてと、妻との最晩年の日々を描いた3部作の1篇だ。
どちらも僕の心には感じるものがあった。
人間だれだって、これだ! と思うことにぶつかるものなのだ。
3部作は著者が80歳になる直前から81歳で他界するまでの2年間に書かれたようで、認知症、老々介護、デイホーム、老人ホーム、入院… と高齢化社会の現在の問題を先取りしたかのような時代性が感じられた。
ラストで夫婦が再開する場面は、会うことができてよかったなぁと思う。
この本を読んで、僕が今まで名前もよく知らなかった、とある人の人生を垣間見た感じがする。
無数の人がこの世界にはいるわけだが、人間という存在一人一人の人生には重みがあるな。