箱男
箱男を読んだ。
「砂の女」などを書いた安部公房の小説だ。
なんと、街にはダンボール箱をすっぽりかぶった「箱男」がうろついているというのである。
のぞき窓をもった箱のつくり方を説明するところから物語が始まる。
ダンボール箱を頭から腰までかぶって街を歩く姿は想像するとおもしろい。
だが、箱男という存在はそんなかわいらしいものではないようだ。
箱男を見ると、人は見て見ぬふりをし、胡散くさがるという。
前に、僕はマスクにサングラスをした相手と会話したことがある。
なんとなく落ち着かない気持ちがした。
こちらからは相手の表情が読み取れないが、相手は僕のことを一方的に見ることができる。
箱男を見つけた人の感覚はそれと同じようなものなのかしら。
箱男は見られずに見ることができるのだ。
また、箱男については、私たちは意識しすぎないように気をつけないといけないらしい。
本書ではその誘惑に負けたAという人物が自らも箱男となってしまった。
その後、ストーリーは章ごとに話が移り変わってよく分からなくなってくる。
そのことについて、あとがきの解説に分かりやすく書かれていた。
ストーリーに沿って見る立場と見られる立場が逆転することにより、話し手が変わっていっていたというのだ。
そう言われれば納得がいった。
いろいろ考えられているんだな。
おもしろい小説だった。