無関係な死・時の崖
10編の話が収められた短編集。
巻末の解説によると、これらは昭和32年から昭和39年の間に書かれたものらしい。
長編作品の「砂の女」、「他人の顔」が発表された時期みたいだ。
「使者」という短編は「人間そっくり」という作品の基になったよう。
本書の全体的な印象としては、解説にも書かれていた、メビウスの輪のような同一・背反関係を感じた。
鏡像関係というか、「箱男」で描かれていた見る立場と見られる立場の関係の逆転というか、自己と他者の関係というか…
そういうことが著者のテーマだったのかしら。
あと、僕がおもしろかったのは「時の崖」という作品かな。
試合中のボクサーの意識の流れを、映画的手法で作品化したのだという。
崖っぷちボクサーの負けられないという切実な感情が伝わってくる。
臨場感があるなぁ。